駐車場の隣地建物からの飛来物による自動車の損傷(全国賃貸住宅新聞5/11号掲載)

            執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC  代表弁護士    片山 雅也
                                           執行役員 弁護士 家永 勲

【相談内容】

最近、駐車場の隣地にある建物が古くなっているにもかかわらず人の出入りがなく、壁のタイルなどが剥がれかけている状態でしたが、何ら対処されないまま放置されていました。駐車場の利用者に迷惑が無いようにしたかったのですが、あくまでも隣地の建物であるため、手を出せずにいたところ、強風の日に壁のタイルが飛ばされた結果、駐車場に止めている自動車に当たってしまい、大きな傷が残ってしまいました。

利用者の方からは、賃貸人の管理不足が原因であると指摘され、自動車の傷を修復する費用を請求されていますが、全額負担しなければならないのでしょうか。

【回答】

隣地にある建物については、確かに所有権があるわけではない以上、対応することは難しいと考えがちですが、だからと言って、ご相談の事例について責任が全くないということはできません。

法的な責任を負担するか否かは、駐車場を適切に利用できる状態で貸したか否かという観点から判断されることになります。法律上、貸す義務を適切に履行しなかった場合の責任を債務不履行責任といいますが、これは、損害が発生することが予見できたか否かということを中心に判断されることになります。今回のご相談の事例を検討するにあたって重要な視点は、予見可能性があったか否かという点といえます。

ご相談の事例では、賃貸人自身も駐車場の利用者に迷惑がかかるかもしれないと感じていたほどに、見た目からも古くなっていることがわかる状態になっていたうえ、人の出入りがなく、何らの対処もされることなく放置されていたとのことです。しかも、壁のタイルが剥がれかけていることも目視できる状態にありました。

このような状態ですと、一般的には、剥がれて飛んでくることは予見することができたと考えることができるため、何らの対処も行うことなく剥がれたタイルにより自動車に損傷が生じた場合には、賃貸人が賠償責任を負担すると考えられます。

ご相談のような状況が確認できた場合には、隣の建物を修繕する必要はありませんが、飛来物による損耗に対処するためにフェンスや防護ネットを設置するなど、利用者に損害が生じることを回避するための努力を尽くす必要があると考えられます。
なお、平成26年11月27日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、平成27年5月26日に施行されま
すので、今後は、同法に基づき、市町村等に保安上危険な空家として措置を求めることも考えられます。

 

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モンスター賃借人への対応(ニューズレター【不動産業界】vol.6掲載)

執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC パートナー弁護士 家永 勲
執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPCアソシエイト・弁護士 渡部 貴之

Q
先生!
最近の不動産業界ではモンスターペアレントならぬモンスター賃借人がいるんですよ。

私の会社が運営するマンションの賃借人が、他の賃借人のお子さんに罵声を浴びせたり、廊下にゴミを放置したり他の賃借人に嫌がらせをしているんです。
でも、契約書には迷惑行為を行ったら契約を解除するという条項は入れ忘れてしまっていました。
この賃借人に出て行ってもらうことはできないのでしょうか?

A

賃借人は他の賃借人など近隣の迷惑となる行為をしてはならない義務を賃貸人に対し負っているものと考えられます。
そのため、近隣の迷惑となる行為すなわち義務違反の程度が著しく、賃貸人と賃借人間の信頼関係が破壊されるに至っているときは、賃貸人は賃貸借契約を解除することができると考えられます。

■さらに詳しく

判例上、賃貸借契約のような継続的な契約関係の場合、契約違反、すなわち債務不履行があることに加えて、当該債務不履行によって契約当事者間の信頼関係が破壊されているといえる場合に、契約の解除は認められるものとされています。
 
他方、契約違反の根拠となる特約が無い場合であっても、信頼関係が破壊されているときには賃貸借契約の解除ができる場合があると考えられます。
この信頼関係の破壊の有無については、「ある事実があれば信頼関係の破壊が認められる」という定式があるわけではなく、事件を扱う裁判所が、個別の事案において信頼関係喪失につながると考えられる事実を総合考慮して判断するものとなります。
賃借人の迷惑行為が問題となった場合の信頼関係破壊について言及した裁判例には、以下のようなものがあります。

例えば、東京高裁昭和61年10月28日判決は、共同住宅の賃借人が、居住部分から階下にゴミ等を捨て他の住民の洗濯物にかける、近所の子ども等に罵声を浴びせる、廊下に私物等を置いて通行を妨害するといった行為を2年間にわたり断続的に行い、階下や隣室の住民が退去してしまった事案ですが、それ自体著しく他人の迷惑となる行為であるといわざるを得ず、賃借人の義務違反の行為によって、信頼関係はすでに破壊されるに至ったというべきである旨判示しています。

他方、東京地裁平成19年1月12日判決では、賃借人が共用廊下に大量の荷物を放置し、奇声を発するなど近隣に迷惑となる行為をした事案ですが、共用廊下に大量の荷物を放置していることについては、被告の連帯保証人の協力を得て解決可能であると解され、また、奇声を発するなどの行為は、近隣居住者の賃貸借契約がそれを理由に解除された事実はないこと等から、必ずしも受忍限度を超えた状況があると認定することはできず、原告と被告との間の信頼関係が破壊された状態にあるとは認められない旨判示しています。

以上のように、裁判例からは明確な基準は導き出すことはできませんが、近隣住民が受忍できず、退去に至るほどの迷惑行為を長期に亘って行っているときは、仮に迷惑行為を行ったら契約を解除するという条項がなかったとしても、信頼関係が破壊されているものと評価され、契約を解除できる可能性があります。
※ 当記事は、2015年5月発行「AVANCE LEGAL GROUP LPC ニューズレター」【不動産業界】vol.6に掲載した内容です。
本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
AVANCE LEGAL GROUP LPC 企業法務ホームページにて、PDF版ニューズレターをご覧いただくことができます。
http://www.avancelegalgroup-lpc.com/

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送迎中の事故と事業者の責任(高齢者住宅新聞5/6号掲載)

           執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 執行役員・弁護士 家永 勲

 デイケアサービスを行っている事業者の中で、利用者の送迎サービスを行っている事業者も多いのではないかと思います。

介護士等の職員が、デイケアサービスを実施する施設の中において、利用者に対して、生命及び身体の安全を配慮する義務を負っていることは明らかであると思われますが、送迎中については、どのように考えればよいでしょうか。

この点について、被告の設置運営する医院においてデイケアを受けていた利用者が、そのデイケアから帰宅するための送迎バスを降りた直後、転倒して骨折し、更には肺炎を発症して死亡したことにつき、この死亡は被告又はその雇用する介護士の注意義務違反により生じたものであるとして、利用者の相続人である原告らが、被告に対し、損害賠償金等の支払いを求めたという裁判例(以下、「本裁判例」といいます。)があり、参考になります。

 まず、本裁判例は、バスの送迎サービスが、利用者と事業者との間の診療契約とどのような関係があるのかについて、被告医院においてデイケアを受けるとともに、その通院にあたって被告医院の送迎バスによる送迎を受けるという、診療契約と送迎契約が一体となった一つの契約を締結していたものと捉えました。

そして、被告は、利用者と被告との間で締結された契約に付随する信義則上の義務として、利用者を送迎するに際し、利用者の生命及び身体の安全を確保すべき義務、すなわち、安全確保義務を負っていたものと判断しました。

なお、被告は、送迎サービスは、診療契約との結びつきはなく、診療契約に求められる安全確保義務のように高い水準の注意義務を負っているものではないと主張していましたが、認められませんでした。
 それでは、この安全確保義務とは具体的にどのような内容のものなのでしょうか。

本裁判例は、安全確保義務について、利用者の移動の際に常時介護士が目を離さずにいることが可能となるような態勢をとるべき契約上の義務であると判断しています。

本裁判例のケースにおいては、被告は、本件事故当時、利用者を送迎する送迎バスに乗車する介護士として、運転手を兼ねた者を1名しか配置しなかったこと、利用者が送迎バスを降車した後、当該介護士は踏み台用のコーラケースを片付ける、スライドドアを閉めて施錠するなどの作業をする必要があり、当該介護士が利用者から目を離さざるを得ない状況が生じたこと等が原因とされ、被告には債務不履行があるとされました。

したがって、事業者におかれましては、施設内のみにおいて安全を確保するのではなく、複数名が送迎を担当するなど、送迎においても安全を確保することができる態勢を整えて、送迎サービスを実施する必要があります。

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